バナナの叩き売り
スレイヤーズ中心よろずブログ
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某そーやさんに捧げた絵ですな。
描いてから珍しくssも思いついたので上げてみます。
とりゃっ
見えない顔
旅の途中の山道。
もう少し歩けば夕方までに宿がとれるであろうとリナさんが空を仰いで呟いてから、ほんの半時ほど経った頃だったろうか。
それまで手が届きそうなほど、柔らかな白い雲を浮かべた青空が一変し、
バケツをひっくり返したような、冷たい横殴りの雨が私達四人を襲った。
梅雨の幕開けである。
辺りはすっかり暗くなり、私達はぐずぐずになった山道に足を取られながら、予定より随分遅れて町の門をくぐった。
実際雨に打たれていた時間はそんなに長くはなかったはずだが、
ぐっしょりと濡れた法衣は思いのほか私の体温を奪っていたらしい。
私は何年ぶりかもわからないひどい風邪をこじらせた。
熱に浮かされる中、リナさんが「まったく。風邪なんかに負けてると正義の名が泣くわよ。アメリア。」なんて冗談まじりに、口に運んでくれたおかゆは美味しかったが、何よりみんなに迷惑をかけてしまっているのが申し訳なかった。
身体が丈夫なのだけが取り得なのにな…。
しかしリナさんがいうにはまんざら悪い事ばかりでもなかったらしい。
ガウリイさんがブーツに穴を開けてしまったらしくて、宿の近くにあった靴屋さんに修理に出したから、どの道、数日間はこの町に滞在しなければならないらしかった。
彼の大きなブーツであれば、買い換えるにもサイズがないので、修理する方が早いのだ。
以前リナさんの脱いだブーツの隣に堂々とそびえたつ…もとい並べられた彼のブーツを見たことがあるが、よく使い込まれて重そうなのに、持ち主に似てどこか温かみのある靴だった。
ゼルガディスさんもこの町の一角にある、大きな寺院が所有する魔道書籍に夢中だとかなんとかで一向かまわないらしい。
そこまで言ってリナさんはいかにも気に食わないといった顔で、
「いくら魔道書が読みたいからって、宿にはろくに帰ってこないし。ちょっとは顔見せればいいのにさー。」と口を尖らせた。
そう、私が風邪をこじらせてはや5日。
宿に呼んでもらった町医者から貰った熱さましも、一向に効く気配もなく、寝込んだままだったのだから、無理もないのだが、
もう随分とゼルガディスさんの顔を見ていなかった。
そこまで考えた後、少し身じろぎをしたら、リナさんがもう眠い?と聞いてきた。
いつもはメチャも無茶もするリナさんだけど、普段の力強い優しさとは少し違った一面で接してくれる。
心配そうに額に乗せてくれた手が冷たくて気持ちがよかった。
そうしていたら「おーい。リナ。開けてくれ。手がふさがってるんだ。」
とドアの向こうから元気な声がする。
「わわ。なにこれ?果物?ちょっと今この子にはこんなの食べさせらんないわよ?」
「違う違う。これマルメロっていうんだってさ。このままじゃ食べられないらしいんだけど、宿のばあちゃんが腰が痛くて高い所の枝が切れないってんでな。ちょっと庭仕事手伝ったらこんなに分けてくれたんだ。」
「ふーん。食べらんないのか。つまんないの。そんで何するわけコレ?」
そこでガウリイさんが、にこにこしながら両手いっぱいのマルメロを備え付けのテーブルの上に下ろすと、一つを手にとって、匂いかいでみな?と言ってリナさんに差し出した。
「…あー。すっごい甘い匂い。」
「あーいいなリナさん…ガウリイさんー私もー」
「はいはい。その為に持ってきたんだ。はやく元気になれよアメリア。」
ガウリイさんの大きな手から受け取ったマルメロは見てくれはごつごつした黄色い洋ナシのようだったが…すっごく甘い匂いで、鼻から大きく吸い込むとほてった胸の奥まで澄んでいくようで、喉の痛みも少し和らいだ気がした。
「…でもちょっとこれへんてこですね。なんか白い毛が生えてるんですが。」
「おっ果物のくせに毛深いのか!!?」
「そんな気色悪い果物があってたまるかあああ!!!!」
スパーンと小気味いいスリッパの音が宿の廊下にこだまする。
でもやっぱりこれ毛深いみたいですよ。とは言わなかったけど。
「ほら、アメリア寝かせるんだから行った行った!!」
「おう!!アメリアまたなー!!」
「はーい。ガウリイさんありがとうございましたー。」
リナさんに背中を押されながら二人が出て行ったあと、どの位眠っていたのだろうか。
額のタオルをかえられた感触にぼんやりと気づいた。
窓の外から梟の声がしたから…きっともう外はうんと暗い。
きっとリナさんだと思って何か言おうとしたけれど、瞼を開けるのがひどく億劫で、身体が…寒い。
熱がまた上がってきたらしい。
そんな私に気づいてか、体温計が口に入れられて、暫くしてまた出された。
額の上のタオルにのせられた手が
重たい。
重たい手だ。
目の前の人が体温計の温度を見る為に「明かり」を唱えたのだけれど、光を押さえたそれでは、顔がぼんやりとしか見えない。
おかえりなさいって言いたいのに声が出ない。
マルメロの甘い匂いと色濃い闇が邪魔をしたせいで
その人の顔はやっぱり見えなかった。
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HN:なおとHP:性別:女性職業:みなさんに応援していただいたお陰で大学生になりました。趣味:根っからの体育会系。筋トレも好き。読書、映画観賞。絵は本業。自己紹介:志は常に武士道にあり。
熱血漢で一人上手で、方向音痴。
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